
巡回指導とは、トラック運送事業者が法令を守れているかを点検する制度です。その結果はGマーク(安全性優良事業所)の評価点にそのまま使われるため、日々の記録管理の積み重ねがGマーク取得の合否を左右します。
本記事では、巡回指導の仕組みと、その結果がGマーク評価(法令遵守・事故実績)へどう直結するのかを全5回シリーズ「Gマーク取得への道」の第2回として解説します。
第1回はこちら→「Gマーク」とは?取得する5つのメリットと申請方法
目次:
巡回指導とは?適正化事業実施機関による点検の基本

巡回指導とは、トラック運送事業者が貨物自動車運送事業法などの関係法令を守れているかを、第三者機関が事業所を訪問して点検する取り組みです。法令違反を未然に防ぎ、是正を促すことを目的としています。
1.巡回指導を行うのは「適正化事業実施機関」|監査との違い
巡回指導でまず押さえたいのが、「巡回指導」と「監査」は別物だという点です。巡回指導は適正化事業実施機関が行う指導・助言で、その場で行政処分が下されるわけではありません。一方、監査は運輸支局(国土交通省)が行い、結果次第で行政処分につながります。
| 項目 | 巡回指導 | 監査 |
| 実施主体 | 適正化事業実施機関(地方トラック協会等) | 運輸支局(国土交通省) |
| 主な目的 | 法令遵守の指導・助言 | 法令違反の確認・行政処分 |
| 結果の扱い | Gマーク評価に反映される | 行政処分に直結する |
※実施主体や権限の区分は、全日本トラック協会および各都道府県の適正化事業実施機関の公開情報に基づきます。
2.点検は7区分38項目|A〜Eの総合評価のしくみ
巡回指導では、運行管理や車両管理など複数区分にわたる項目がチェックされ、結果は5段階の総合評価としてまとめられます。具体的には7区分38項目を点検し、各項目を「適」「否」で判定したうえで、A〜Eの総合評価が付きます。
評価が低いほど改善対応の負担が重くなります。「適」の割合の目安は次のとおりです。
| 総合評価 | 「適」の割合の目安 | 主な対応 |
| A〜C | 高い | 継続的な安全管理 |
| D | 60%以上70%未満 | 改善報告書・改善資料の提出 |
| E | 60%未満 | 改善対応+監査の対象になりうる |
※割合の数値は適正化事業実施機関の公開資料に基づく目安です。重点指導項目に1つでも「否」があると、総合評価が1段階引き下げられます。
3.実施頻度は「おおむね2年に1度」|低評価だと頻度が上がる
巡回指導は、おおむね2年に1度の頻度で実施されます。ただし、総合評価がD・Eと低いと、半年に1回など頻度を上げて重点的に指導される運用があるほか、運輸支局の監査強化の対象になりうる点にも注意が必要です。
巡回指導の結果がGマーク評価にそのまま使われる仕組み

ここからは、巡回指導とGマークのつながりを見ていきます。Gマーク(安全性優良事業所)の評価は3つの項目で構成され、「法令遵守」の点数に巡回指導の結果がそのまま用いられます。
1.Gマーク評価は「100点満点・80点以上」|3つの評価項目
Gマークは、全日本トラック協会が認定する制度です。評価は次の3項目からなり、合計100点満点中80点以上、かつ各項目の基準点を満たすことが認定の条件とされています。
| 評価項目 | 配点 | 基準点 |
| Ⅰ 安全性に対する法令の遵守状況 | 40点 | 32点 |
| Ⅱ 事故や違反の状況 | 40点 | 21点 |
| Ⅲ 安全性に対する取組の積極性 | 20点 | 12点 |
※出典:全日本トラック協会「貨物自動車運送事業安全性評価事業(Gマーク制度)申請案内」。配点・基準点は年度によって見直される場合があるため、申請年度の最新案内で必ず確認してください。
関連記事:「Gマーク」とは?取得する5つのメリットと申請方法
2.評価項目Ⅰ「法令遵守」は巡回指導の結果が点数になる
適正化事業の巡回指導の結果は、Gマーク評価項目Ⅰ「安全性に対する法令の遵守状況」の点数として反映されます。さらに2023年度(令和5年度)からは、従来は申請書類で評価していた運輸安全マネジメント関連の項目が、巡回指導結果による評価へと変更されました。巡回指導で法令遵守の状況を整え「適」を積み重ねることが、Gマーク取得の評価向上につながります。
3.配点の約8割を占める「法令遵守+事故実績」が勝負どころ
Gマークの評価は100点満点で、合格ラインは80点です。そのうち、法令遵守状況を評価する「項目Ⅰ」と、事故・違反実績を評価する「項目Ⅱ」だけで合計80点を占めます。この2項目がGマーク取得の土台で、ここで点数を落とすと合格は難しくなります。
Gマーク評価項目Ⅱ「事故や違反の状況」で減点しないための基礎

巡回指導と並んで配点の大きい項目Ⅱが「事故や違反の状況」です。ここは過去の実績で決まるため、申請直前の対策では改善が難しい領域です。
1.事故・行政処分の有無が配点40点を左右する
項目Ⅱは、一定期間内に重大事故や行政処分がなかったかで点数が決まります。過去3年間に第一当事者となる重大事故がなければ加点、行政処分がなければ加点という形で、無事故・無違反の事業所ほど満点に近づきます。
2.直前対策では間に合わない|記録は日々の積み重ねが出る
事故・違反・指導の記録は、後からさかのぼって作ることはできません。点呼の記録もドライバーへの指導監督の記録も、「その日に正しく残したかどうか」がすべてです。だからこそ、巡回指導もGマークも、日々の記録の積み重ねが結果として表れます。
巡回指導でつまずきやすい項目と、現場での指摘傾向

巡回指導では、書類(帳票類)の不備が指摘につながりやすい傾向があります。巡回指導を見据えるなら、まず記録の「抜け・漏れ・保存切れ」を防ぐことが近道です。
1.点呼記録・指導監督記録・点検記録の不備が指摘されやすい
巡回指導では、運行管理や整備管理に関する書類の保存状況が重点的に確認されます。代表的な項目は、以下のとおりです。
- 点呼記録簿の記載漏れ(実施時刻、アルコールチェック結果、点呼方法など)
- 指導監督の年間計画・実施記録・保存の未整備(初任運転者・高齢運転者・事故惹起運転者など)
- 日常点検・定期点検の記録や、点検整備記録簿の保存不足
- 労務管理(拘束時間・休息期間など改善基準告示)に関する記録の不備
これらの不備は、実際には業務を実施していても、記録が残っていなければ「未実施」と判断される場合があります。そのため、記録の管理体制を整えることが重要です。
関連記事:点呼記録簿の保存義務とは?保存期間や必須項目、監査で指摘されない「電子保存」の要件を解説
2.【現場でよくある例】記録のバラバラ管理が招く失点
点呼は紙の記録簿、指導記録はExcel、事故・違反は担当者の手元メモ、というように管理が分散していると、巡回指導の前に多くの時間を取られます。担当者の異動や退職で記録の所在が分からなくなり、実施していた指導が「記録がないために評価できない」と扱われてしまうケースも起こり得ます。
巡回指導とGマークに備える日常管理のコツ

巡回指導やGマーク申請で評価を得るためには、日頃からの適切な管理が欠かせません。ここでは、日常業務の中で実践したい管理のポイントを紹介します。
1.点呼・指導・事故・点検をクラウドで一元管理する
巡回指導やGマーク申請では、点呼記録や指導監督記録、事故記録、点検記録など、多くの書類の提出や確認が求められます。しかし、紙やExcelで管理していると、記載漏れや保存漏れ、必要な記録をすぐに見つけられないといった問題が発生しがちです。クラウドサービスを活用して記録を一元管理すれば、入力状況の確認やデータの検索が容易になり、管理者の負担軽減にもつながります。
2.指導記録・違反歴・連続無事故日数を自動で見える化
巡回指導で押さえたい記録と、車両運行管理システムの機能を、アネストシステムのBusiness Support System(BSS)を例に挙げて整理しました。
| 押さえたい記録 | 車両運行管理システムの主な機能(例:BSS) |
| 指導監督の計画・記録 | 指導記録機能(初任・高齢・事故惹起者などをカレンダー管理し、予定をお知らせ) |
| 事故・違反の実績 | 事故記録管理・違反歴管理(3年保管義務項目を網羅し、累積違反点数や連続無事故日数を自動計算) |
| 日常点検の記録 | 日常点検機能(法定21項目に対応し、結果をPDF出力) |
| 点呼の記録 | 点呼記録簿の電子化(実施状況を保存・確認)。対面・電話・IT・遠隔点呼・自動点呼など幅広い点呼方法に対応し、記入漏れ・実施漏れをアラートで通知。 |
| 労務管理(改善基準告示) | 改善基準告示チェック機能(デジタコ連携で拘束時間・休息期間などの違反を判定) |
記録の作成や保存を日常業務の中で確実に行える体制を整えておけば、記載漏れや保存漏れの防止につながるだけでなく、巡回指導やGマーク申請時の対応負担も軽減できるでしょう。
3.長距離運行の点呼も「記録の抜け漏れ」を防ぐ|遠隔地遠隔点呼・自動点呼の活用
点呼記録は巡回指導でも指摘されやすい項目です。特に宿泊を伴う長距離運行では、運行管理者がその場にいない時間帯の点呼をどう確実に実施・記録するかが課題です。
BSSでは、点呼に必要な項目をシステムが自動表示し、実施状況をそのまま電子記録として保存できるため、点呼項目の抜け・漏れを防ぎ、巡回指導での指摘リスクを下げることにつながります。
遠隔点呼の概要については、以下の記事で解説しています。
関連記事:遠隔点呼の要件とは?IT点呼との違いや、Gマークなしでも実施できるケースを徹底解説
よくある質問(FAQ)|巡回指導とGマーク

ここでは、事業者からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。導入前の不安や疑問の解消にお役立てください。
Q:巡回指導と監査は何が違いますか?
A:巡回指導は適正化事業実施機関が行う指導・助言で、その場で行政処分は下されません。一方、監査は運輸支局(国土交通省)が行い、法令違反が確認されると行政処分につながります。
Q:巡回指導の「7区分38項目」とは何ですか?
A:運行管理や車両管理などにわたる点検項目で、各項目を「適」「否」で判定します。その結果をもとにA〜Eの5段階で総合評価が付き、重点指導項目に「否」があると総合評価が1段階引き下げられます。
Q:巡回指導で低評価(D・E)になると、どうなりますか?
A:一般に、D・E評価では改善報告書や改善後の資料提出が求められます。さらに低評価が続く事業所は、重点的な指導や運輸支局の監査の対象になりえます。
Q:巡回指導の対策は、いつから始めるべきですか?
A:巡回指導対策は、直前の準備よりも日常管理が重要です。点呼や指導監督、事故、点検の記録は後から補えないため、日々の記録を確実に残すことが最善の対策です。
Q:Gマークを取得した後も、巡回指導は受ける必要がありますか?
A:巡回指導自体は運送事業者に対して行われる制度で、Gマーク取得後も法令遵守状況は問われます。ただし、巡回指導でA判定(最高評価)を取得した事業所は、次回の巡回指導までの期間が2〜3年ごとの実施となる緩和措置が受けられます。
まとめ|巡回指導は日々の記録で差がつく

巡回指導は、点呼や指導監督、事故管理、日常点検などの記録を日々積み重ねていくことが、適正な評価を受けるための近道です。
そこで活用したいのが、Business Support System(BSS)のような車両運行管理システムです。巡回指導やGマーク対策をその場しのぎにしないためにも、日常業務から記録管理の仕組みづくりを進めましょう。
緑ナンバーの点呼・アルコールチェックの記録管理ならBSS
Gマーク申請では、点呼やアルコールチェック記録の集計に手間がかかります。「Business Support System(BSS)」なら、これらの記録をクラウドで一元管理し、必要なデータをスムーズに集計できます。対面点呼やIT点呼、遠隔点呼、そして自動点呼まで全てに対応しているため、取得後の運用もスムーズです。まずは資料をご覧ください。
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